フランスの女性監督コラリー・ファルジャによる往年(?)の女優デミ・ムーアを主演に迎えた『サブスタンス』。
外見至上主義社会を批判する衝撃のホラーエンタテインメントとして、公開と同時に世界中で大きな話題を呼びました。
日本でも注目してもらいたい映画として解説します。
1. 映画概要
原題:『The Substance』
言語:英語
2024年製作/142分/R15+/イギリス・フランス合作
監督/脚本:コラリー・ファルジャ
出演者:デミ・ムーア、マーガレット・クアリー、デニス・クエイド
配給:ギャガ
日本劇場公開日:2025年5月16日
2. あらすじ
50歳の誕生日を迎えた元トップ人気女優エリザベスは、容姿の衰えによって仕事が減っていくことを気に病み、新しい「サブスタンス」という違法薬品に手を出す。薬品を注射すると脱皮し「スー」という上位互換の女性が現れ、若くて美しくまたエリザベスの経験を持つスーはたちまちスターダムを駆け上がっていく。エリザベスとスーには、それぞれの命と状態を維持するため1週間ごとに入れ替わらなければならない絶対的なルールがあるが、スーが次第にそのルールを破り始める。
3. 感想
この『サブスタンス』は、おぞましく嫌悪感いっぱい、そして衝撃的な風刺ホラー映画と取られているようですが。。。
コラリー・ファルジャ監督が「フランス映画界では、女性が年を重ね肉体が衰えるにつれ周囲の対応が違う。特に40歳を過ぎたときから顕著で、そういう社会をどうにかしたいと思った」とインタビューの中で語っているように、実は『サブスタンス』はファルジャ監督自身の経験を元にした、れっきとしたフェミニスト映画です。

そうは言っても、50歳を過ぎた主人公エリザベスの役でゴールデングローブ賞最優秀主演女優賞を受賞するなど、役者としてしばらく遠ざかっていた表舞台にカムバックを果たしたデミムーア。そのデミ・ムーアの63歳とは思えない素晴らしい肉体と顔は、昔相当のお金をかけて顔や体を整形して得たもの。
加えて、日本でのこの映画の宣伝に、どうも若くて美しいスーを演じるマーガレット・クアリーの肉体美を賛美する内容が多く、それこそ外見至上主義に輪をかけたようだと矛盾が拭えません。
着眼点はとても良いのですが、なんだか逆の結果が見えて残念。
元々ホラー映画が苦手なのもあって、評価は星三つ。
★★★
ただ、コラリー・ファルジャ監督には、これからも女性の観点で社会をずばり斬る作品を作り続けてほしいと応援したいと思います。

4. プロフィール
📣 監督: コラリー・ファルジャ

Coralie Fargeat、フランスの女性映画監督、脚本家。
1976年パリに生まれる。16歳の頃から映画製作を志し、パリ政治学院を卒業後パリの映画学校ラ・フェミスに学ぶ。初めてメガホンをったた2003年の短編映画『 Le télégramme 』でいくつかの映画祭の賞を受賞。
2014年、『Reality+』では審査員賞にノミネート。
2017年、初の長編映画『REVENGE リベンジ』を監督がトロント国際映画祭でプレミア上映され、注目される。
この『サブスタンス』ではカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞、アカデミー賞で5部門にノミネートされ、アカデミーメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞。
★ 主演デミ・ムーア

Demi Moore アメリ合衆国の女優。
1962年ニューメキシコ州に生まれる。生まれる前に両親が離婚、また母親の再婚相手は次々に職を変え何度も引っ越しをするなど、複雑な幼少時代を送った。16歳でモデルになるため学校を中退。1982年メロ・ドラマに出演し注目されるが次第に麻薬にのめり込むようになる。『セント・エルモス・ファイアー』の撮影に麻薬でハイになった状態で表れクビになったこともあった。その後治療を受け立ち直る。
1990年の『ゴースト/ニューヨークの幻』の大ヒットで一躍有名になり、1997年の『G.I.ジェーン』など数々の映画に出演。2003年の『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』では、全身美容整形し出演したことは有名である。4度の結婚と離婚を経験しており、三人目の夫ブルース・ウィリスとの間に3人の娘がいる。妊娠中に『ヴァニティ・フェア』誌のカバーを飾った妊婦ヌードは社会現象となった。四度目の結婚相手は16歳年下の俳優アシュトン・カッチャー。
俳優業の傍らプロデューサーとして、『オースティン・パワーズ』のシリーズを制作している。
★ マーガレット・クアリー

Margaret Qualley、アメリカ合衆国の女優、モデル。
1994年モンタナ州に生まれ、ノースカロライナ州で育つ。母は女優アンディ・マクダウェル、父は元モデルで牧場主のポール・クアリー、姉のレイリーもモデル/女優である。バレエを本格的に学んだ後、ロンドンの王立演劇学校、ニューヨーク大学に通う。2011年モデル活動を始め、16歳でランウェイデビューし、ヴォーグやヴァニティ・フェアなどの雑誌に登場する。2013年『パロアルト・ストーリー』で映画デビュー。その後数々の映画に出演、2021年ネットフリックス配信『メイドの手帖』に主演し、ゴールデングローブ賞などにノミネートされた。2023年に音楽プロデューサーのジャック・アントノフと結婚している。
5. あとがき
私が住んでいるニュージーランドでは、年齢はともかく外見であまりとやかく言われることがないので(と言っても一般社会の中で)、上述のコラリー・ファルジャ監督のコメントには驚きました。同じ西欧社会でもフランスもそうなんだと。
日本は他のアジアの国にもれず外見至上主義が大きく影響する社会。芸能界やテレビ業界が今揺さぶられている事件は氷山の一角と言えるのではないでしょうか。
是非この機会に、この『サブスタンス』を観て外見至上主義の行く末も考えてもらえればと思います。
Ngā mihi
wonderer