ダニエル・クレイグが切ない大人の恋愛を艶めかしく演技『QUEER/クイア』感想

映画『君の名前で僕を呼んで』や『チャレンジャーズ』のダイレクターであるルカ・グァダニーノの新作品『クィア/QUEER』の紹介とレビューです。

主演は『007』でおなじみのダニエル・クレイグ。
日本公開は2025年5月9日。



原題 :『QUEER』
ジャンル:恋愛
原作:ウィリアム・S・バロウズ著の同名小説(1953年作)
言語:英語、スペイン語
製作国:アメリカ合衆国、イタリア
時間:137分
監督:ルカ・グァダニーノ
出演:ダニエル・クレイグ、ドリュー・スターキー、ジェイソン・シュワルツマン、レスリー・マンヴィル
日本公開日:2025年5月9日(金)
配給:ギャガ

物語の舞台は1950年代メキシコシティ。主人公の元駐在員ウィリアム・リーは、小さなアメリカ人コミュニティで日々酒を煽り孤独な一人暮らしを送っている。ある日美しい青年ユージーンと出会い一目で恋に落ちる。リーはミステリアスで気紛れなユージーンに次第にのめり込んでいく。そしてリーはある決心をしてユージンを誘い南米の旅に出る。

ルカ・グァダニーノ監督の代表作の『君の名前で僕を呼んで』は少年の淡い恋愛が対象であるのに対し、この『クィア/QUEER』は、更にもっと踏み込んだ大人の恋愛が描かれています。

ミステリアスな愛人に惚れぬき、何とか自分に引き留めようとする主人公のリーの情けないほど純真な心情に、恋愛につきものの甘酸っぱさ、切なさ、そしてつらさなど情感を覚えることでしょう。

そしてそのリー役をダニエル・クレイグが文字通り体当たりの演技で表現!
孤独を抱えながら酒とドラッグに溺れた金持ちの同性愛志向の白人中年男性の役を、実に艶めかしく演じています。007シリーズで見せたストイックでタフなボンドの面影はみじんも感じられません。
役者としての才能について語るまでもありませんが、ダニエル・クレイグには見ていて華があります。こういう人を生まれながらの役者だと言うのでしょう。

そして1950年のメキシコの描写もこれまた素敵です。本国の社会から落ちこぼれたアメリカ人が酒とセックス陥る退廃的な雰囲気が漂い、それにニルヴァーナの社会風刺的な音楽が加わり魅力的に出来ています。

カメラワークもこれまた素晴らしいです。 特に最初の数分間は美しく引き込まれるものがあります。今振り替えれば、一見堕落したような社会の中にもそれなりに懸命に生きている人生があることを示唆していたのではないかと思います。

内容が内容だけに生理的に合わないという人もいるかと思いますが、プロット、演技、そして芸術性と3拍子揃っていることに加えて、ダニエル・クレイグのファンという個人的な主観から評価は星5つです。
★★★★★

📣監督 ルカ・グァダニーノ

Luca Guadagnino
イタリアの映画監督、脚本家、映画プロデューサー。
1971年イタリアのシチリアに生まれエチオピアで育つ。イタリアのパレルモ大学卒業後、ローマのサピエンツァ大学で文学と映画史を学び、映画評論を執筆。
1997年短編映画『 Qui』で監督デビュー。99年の初の長篇映画『ザ・プロタゴニスツ』でヴェネツィア国際映画祭にて特別賞受賞。2010年ヴェネツィア国際映画祭で、審査委員長のクエンティン・タランティーノとともに審査委員を務める。同年、ティルダ・スウィントン主演の『ミラノ、愛に生きる』でボルダー国際映画祭で最優秀作品賞を受賞。2015年『胸騒ぎのシチリア』、2023年『ボーンズ アンド オール』、2024年『チャレンジャーズ』のメガホンを取り、2017年のティモシー・シャラメ主演『君の名前で僕を呼んで』は、サンダンス映画祭など各映画祭で上映され、同年アカデミー賞では脚色賞を受賞、作品賞にノミネートされた。25年リリースの『クィア/Queer 』はベネチア映画を皮切りに上映、主演のダニエル・クレイグは数々の賞で主演男優賞にノミネートされる。

☆ 主演 : ダニエル・クレイグ

Daniel Craig イギリスの俳優
1968年チェスターに生まれる。複数のパブのオーナーである父親と、教師の母親の元に生まれる。1972年両親が離婚し、母と姉と共にリヴァプールへ移る。16歳の時、ロンドンに移りナショナルユースシアターに通う。シェイクスピアの劇で舞台、1992年に『パワー・オブ・ワン』で映画デビュー。1998年、『愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像』で、エディンバラ国際映画祭最優秀演技賞を受賞。その後、『トゥームレイダー』や『ロード・トゥ・パーディション』などのアメリカ映画にも出演。2004年公開の『Jの悲劇』でロンドン映画批評家協会賞英国男優賞を受賞。2005年から、6代目ジェームズ・ボンド役として『007』シリーズの5作に主演。バッシングを受けながらも寡黙でタフなボンドを演じ、初作の『007 カジノ・ロワイヤル』はシリーズ最高記録の興業収入を樹立。名実ともにスターとなる。2021年の『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』を最後にボンド役を引退。2019年『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』でゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネート。2012年のロンドンオリンピック開会式にエリザベス2世をエスコートするボンド役として出演。また、ボンドの設定通りに、2022年クレイグ自身が聖マイケル・聖ジョージ勲章を授与される。2019年『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』でゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネート。
2011年6月22日に女優のレイチェル・ワイズと再婚。前妻との間の子供も含めて娘が二人いる。

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1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。