Kia ora、
毎年恒例のニュージーランド国際映画祭で『急に具合が悪くなる』を観ました。監督は濱口竜介で、彼は『ドライブ・マイ・カー』や『悪は存在しない』の監督として知られています。
なお、主演の岡本多緒とヴィルジニー・エフィラと岡本多緒が、カンヌ国際映画祭でダブル最優秀女優賞を受賞した話題作です。本作は緊張感のある対話と緻密な演出が特徴で、観客を日常と非日常の境界へと誘います。
『急に具合が悪くなる』
原題:『急に具合が悪くなる』/英題 : 『All of a Sudden』
製作年:2026年/製作国:日本・フランス・ドイツ・ベルギー
上映時間:196分/言語:フランス語・日本語
原作:「急に具合が悪くなる」宮野真生子、磯野真穂 著
監督 : 濱口竜介
脚本 : 濱口竜介、ルディムナ玲亜
出演 : 岡本多緒、ヴィルジニー・エフィラ、長塚京三、黒崎煌代
あらすじ
パリ郊外の介護施設「自由の庭」の施設長、マリー=ルー・フォンテーヌは入居者を人間らしくケアすることを理想とする。新しくて画期的なメソッド「ユマニチュード」を導入しようとしているが、実際には人手不足やスタッフの理解のなさなどの現実に直面していた。
そんな中、たまたま観た舞台に共鳴し舞台の演出家である森崎真理との交流が始まる。真理は癌に犯され闘病中であったが、真理とマリーの二人の関係は日々深くなる。

感想
本作『急に具合が悪くなる』には濱口竜介監督の人間観、自然観が凝縮されていると言ってよいかと思います。
ただ単に瀕死に陥っている女性の人間関係だけではありません。 人間の尊厳や資本主義、自然などが織り込まれています。
濱口竜介監督自身があるインタビューで「そもそもこの映画の脚本自体が、なんでこんなに映画にしづらいものを書いてしまったのかと思うようなもの。。。」とコメントされています。 しかし、そこはさすが濱口監督です。彼の深い世界観は包括的に表現されているので、『悪は存在しない』のように心にずっしりのしかかるような重さはありません。

画像もそうです。『ドライブ・マイ・カー』と『悪は存在しない』ではどきどきするほどの鋭い美しさでしたが、『突然具合が悪くなる』の画像は違います。柔らかな美しくさで、人生ってそう悪くないようなみたいな、淡い幸せな余韻が残りました。
主人公の二人が異言語で話す言葉もしかり。異言語で表現されることで、言葉は話し手を超えて普遍的なものとなり、それだけに心に大きく訴えかけてきます。

主役を演じた 岡本多緒とヴィルジニー・エフィラには大変な労力を要したに違いありません。その甲斐あってカンヌ映画祭でダブルで最優秀女優賞を受賞して本当によかったです。
特に岡本多緒の最後のヴィルジニー・エフィラと抱きしめあった時に見せた、あの切ない表情は今でも忘れることができません。
ちなみに、ヴィルジニー・エフィラは、カンヌ国際映画祭の受賞会見で、日本語の「突き刺さった」と表現したそうです。面白いですよね。
それから長塚京三さんは留学経験があって元々フランス語は流暢に話せるとか。よどみなく話されていましたもんね。

壮大で深いテーマを人情味と人間愛に満ちたドラマ。 色々と考えさせられました。
評価は星五つでも足りないほどです。
★★★★★
*ユマニチュード
フランスで発祥したケア技法で、身体拘束をなくし、最期までその人らしい尊厳ある生活を支えることを目標する。
(ユマニチュードの5原則)
強制ケアの禁止、プライバシーの尊重、 最期まで歩行を支援、開かれた施設環境、 生活の場の実現
プロフィール
📣 監督/脚本 濱口竜介
映画監督、脚本家
1978年神奈川県川崎市生まれ

東京大学文学部卒業後、東京藝術大学大学院の新設の映画監督養成コース在籍中に監督した『PASSION』が世界の注目を浴びる。2013年『ハッピーアワー』で国際映画祭で最優秀女優賞、芸術選奨新人賞、日本映画批評家大賞選考委員特別賞を受賞し成功を収める。2018年、『寝ても覚めても』を製作、2020年、パンデミック中に小規模映画館支援のための『ミニシアター・エイド基金』を創設。2020年公開の黒沢清監督『スパイの妻ー〈劇場版〉』を脚本し、ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞。2021年 『偶然と想像』が、ベルリン国際映画祭のコンペティション部門で銀熊賞を受賞。同年7月、『ドライブ・マイ・カー』でカンヌ国際映画祭コンペティション部門で脚本賞、ゴールデングローブ賞、アカデミー賞の作品賞・監督賞・脚色賞・国際長編映画賞にノミネート、国際長編映画賞を受賞。同年2月、ベルリン国際映画祭で国際審査員を努めた。2023年『悪は存在しない』でヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)を受賞[。日本人としては黒澤明以来初めて、アメリカのアカデミー賞と世界三大映画祭すべてで受賞を果たした監督となる。
🌟 主演:岡本多緒
女優、モデル。(旧芸名 TAO )
1985年千葉県市川市に生まれ

名前は中国の道教、タオイズムからとって付けられた。東京の明星学園高校卒。14歳でモデルデビュー。2006年21歳の時に単身で渡仏。2009年、長髪からマッシュルームカットに髪型を変えたことで注目を浴びブレイク。2009年新人モデルトップ10にランキングし賞を受賞。新星のスーパーモデルとして『Vogue Nippon』などの表紙を飾った。2010年には日本のテレビ番組にも出演。数あるブランドのキャンペーンに出演、2012年シュウ・ウエムラのビューティーアンバサダーに抜擢された。
2013年『ウルヴァリン:SAMURAI』でハリウッド女優デビュー。その後アメリカテレビシリーズや、アマゾン・ビデオ『高い城の男』に出演。日本映画は2015年『クロスロード』、2018年三池崇史監督の『ラプラスの魔女』に出演。2019年『She’s just a shadow』では主役を演じる。2023年には吉野耕平監督の『沈黙の艦隊』に出演。2026年、濱口竜介監督の『急に具合が悪くなる』でヴィルジニー・エフィラと日本人初カンヌ国際映画祭の女優賞を受賞。
2016年、スイス出身の編集者・クリエーターのテンジン・ワイルドと結婚し、2026年第1子出産。
🌟 主演:ヴィルジニー・エフィラ
Virginie Efira ベルギーとフランスの女優
1977年ベルギーのブリュッセル 生まれ、2005年パリに移住

1999年ベルギーでキャスターを初め、様々な番組の司会を務める。フランスのM6チャンネルで天気予報キャスターを務めたことがきっかけで、すぐにM6の看板スターとなりフランスのTV番組に出演。2004年から映画に出演するようになり、2013年『It Boy (年下のカレ)』で初主演を務め、その後2『エルELLE』(2016年)、『バイ・バイ・モロンズ』(2020年)、『ベネデッタ』(2021年)、『プライベート・ケース』(2026年)など数多くの作品に出演。2018年『不可能な愛』、2019年『シビル 愛と妄想のシンドローム』でフランス主演女優としての位置を確固たるものにする。 2023年『パリの記憶』でセザール賞最優秀女優賞を受賞。2026年の『急に具合が悪くなる』では岡本多緒とともにカンヌ国際映画祭最優秀女優賞を受賞。
あとがき
今回紹介した『急に具合が悪くなる』は毎年恒例のNZ国際映画祭で観ました。
今年上映されている日本映画は『急に具合が悪くなる』を含め何と8本!素晴らしいです。
『黒い雨』今村昌平監督
『箱の中の羊』是枝裕和監督
『急に具合が悪くなる』濱口竜介監督
『我々は宇宙人』門脇康平監督
『すべて真夜中の恋人たち』岨手由貴子監督
『ナギダイアリー』深田晃監督
『チルド』岩崎裕介監督
『黒牢城 』黒沢清監督
NZ国際映画祭はウェリントンでの開催は終わってしまいましたが、現在全国各地で開催中、もしくは開催予定です。
詳細は、↓をクリックしてご確認下さい。
https://www.nziff.co.nz/2026
Ngā mihi
wonderer
追伸
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