皮肉感の強いウェリントンの『アート・オブ・バンクシー』日本未公開

Kia Ora

ニュージーランドの首都ウェリントンでは、クリスマスホリディにかけて『The Art of Banksy/アート・オブ・バンクシー』展が開かれています。

『アート・オブ・バンクシー』展はこれまで世界15都市で開催され観客動員数が150万人に達した数あるバンクシー展の中でも今話題のエキシビションです。

日本未公開。ウェリントンにおいでの際はこの機会をお見逃しなく。

● 特徴

ストリート・アーティストとして世界的に有名なバンクシーの集大成とも言えるエキシビションです。過去数十年に渡って制作されたプリント、彫刻、フィルムなど様々なスタイルのバンクシー独特のユニークな作品が一堂に展示。その数はなんと150にものぼります。
バンクシーのアートコレクション展示としては世界最大級、そしてそのほとんどの作品が一般公開初めてです。

勿論全作品オリジナルでバンクシー自身により認証されてています。

● 展示作品

『アート・オブ・バンクシー』展の展示作品の例です。

  • 三種類の色でプリントされた代表作の『風船と少女』や、『花束を投げる男(Flower Thrower)』、『Rude Copper』などの有名作品
  • 下書きや、友人や同僚、恋人に送った珍しい個人的な作品
  • *1『Dismaland(ディズマランド:憂鬱、陰気な世界)』や *2『 The Walled Off Hotel (ウォールド・オフ・ホテル)』、そして最近の作品ウクライナの被災地での作品など、社会に対するメッセージが強いもの
  • *3オークションで約1億5千万円で落札された直後に作品の半分をシュレッダーで切断し、新たに作品ととして発表された『Love is in the bin 』

*1『Dismaland(ディズマランド:憂鬱、陰気な世界)』
2015年イギリスで5週間開催されたディズニーランドを皮肉った暗くて陰気なテーマパーク。現代社会への風刺。
*2『 The Walled Off Hotel (ウォールド・オフ・ホテル)』
パレスチナ自治区ベツレヘムに存在するパレスチナとイスラエルを分断する高さ8メートル、全長450キロを超える巨大な壁のすぐ近くに2017年オープンしたThe Walled Off Hotel (ウォールド・オフ・ホテル)。壁しか見えず世界一眺めの悪いホテルと言われているが、バンクシーと他のアーティストが共同でグラフィティをした壁が見えることでも有名
* 32018年のオークション中『風船と少女』が約1億5千万円で落札された直後に、価格暴騰やアートの商業化を批判する目的でバンクシー自身が遠隔操作で作品の半分をシュレッダーで切断。そしてバンクシー自身が『Love in the bin 』 とのタイトルを付けた。2021年10月14日に再びオークションに出品され約29億円で落札

とにかく、展示作品数が多く見どころが沢山。

でも、テーマ毎に作品が上手くまとめて展示されている他、大きなラベルで作品が制作された背景などの詳細がとてもわかりやすく説明されており、まるでバンクシーの伝記を読んでいるかのようでした。おかげでゆうに1時間半の充実した時間を過ごしました。
一緒に行った高校生の子供も楽しんだようです。

展示場にはところどころにバンクシー自身の言葉の引用が掲載されています。それがとても面白い!

この『アート・オブ・バンクシー』展を介して、バンクシーはアートという媒体を使い現代社会の問題を提起していること。またストレートでわかりやすいメッセージは、世界中の人々の支持を得そして世論に大きく影響していることがよくわかりました。 
ですが、その一方で『 Love is in the bin 』事件に象徴されているように、アートのコマーシャル化に反対するバンクシーの作品がこうしてエキシビションで展示されることにより、投資目的のコレクターの収入源になっているとは、なんとも皮肉なことです。

バンクシー自身はどう思っているのでしょうか。

『The Art of Banksy 』

場所     :Tākina Wellington Convention & Exhibition Centre, Wellington, NZ
             ( 国立博物館テパパの向かい)
開催期間:2024年11月28日 ~ 2025年1月20日(12月25日休館)
開催時間:10am – 5pm 最終入場 4pm
料金       : 大人 NZ$ 45.90  学生 NZ$ 39.00  11歳以下無料
HP         : takina.co.nz/visit/whats-on/the-art-of-banksy

ニュージーランドでは日本のように頻繁にアート展が開かれることがないので、ウェリントンでワールドクラスの『アート・オブ・バンクシー』が観れて嬉しい限りです。

年明けには同じくウエリントンのテパパ博物館で、バンクシーと同じイギリス出身で前衛的なファッションデザイナーの『ビビアン・ウェストウッド ジュエリー』展が開かれます。こちらも特集を組んで紹介する予定です。お楽しみに。

それでは皆さん、良いお年を。
2025年もどうぞ宜しくお願いいたします。

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ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。