これでNZの世の中は安全??ギャングの紀章を禁じる『ギャング規制法令2024』解説

Kia ora

ニュージーランドでは2週間前に『ギャング規制法令2024』が施行され、ギャングが公の場でバッジを身に着けるなど記章することが出来なくなりました。すでに取り締まりにより数十人が刑罰を受けており、連日メディアでも報道されています。

この編では、そのギャングに対する新しい規制『ギャング規制法2024』と、ニュージーランドのギャングについて詳しく解説します。

11月中旬、ニュージーランドではギャングに関する法律が改正され、公共の場でのギャングの記章が禁止されています。

簡単に言うと、ギャングは所属グループ名やモチーフが刻まれたジャケットやバッジ、旗などを公の場で身に着けることができません。

このギャングを取り締まる新しい法律『ギャング規制法令2024』は、去年発足した連立内閣によって制定されています。

去年の総選挙のキャンペーン中、連立内閣を組むナショナル、ACT、NZFirst 党三党とも「法と秩序」をスローガンの中に盛り込んでいました。
具体的には、National党は公の場でのギャングの記章禁止、ACT党はギャング規制法、そしてNZFirst 党は犯罪を犯したギャングは専用の刑務所に収監を、それぞれ提唱していました。

その背景に、頻発した若者の集団による宝石店などの店舗の即効襲撃や、軽い刑罰、そして警察が犯罪に甘いことが世間で問題視されていたことが挙げられます。

この為三党は連立内閣を組むや否や、すぐさまギャングに関する法律の改定に取り掛かり、今回新たに『ギャング規制法令2024』として実行に移される運びとなりました。

『ギャング規制法令2024』には様々な規制が盛り込まれています。
ここでは、その中の主要な三項目を紹介します。

● 公の場での記章禁止

スポーツ・フィールド、飲食店、店舗、公共交通機関、施設などの公の場でギャングを象徴するもしくはそれに結び付く紀章を禁止。違反者は六ヶ月間の服役か最高5,000NZドルの罰金。また繰り返した場合は、自宅内を含めて一切のギャングの記章所有が禁じられる。

● 離散命令

公共の場に3人以上が集まって迷惑行為を行った場合は、警告が与えられ最低1週間は同じ顔触れで公共の場に集まることができない。

● 特定グループの接触禁止

ライバルグループ同士の接触を禁じる。

尚、この『ギャング規制法2024』は現在35のギャンググループが対象です。この中にはギャング予備軍といわれるグループも含まれています。

警察は積極的に取り締まりを実行しており、すでに対象グループを拡大することを検討しています。

これまでギャングの規制について説明してきましたが、ここではニュージーランドのギャングそのものについて紹介します。

◎ ギャング歴史

1940年代 バイクギャング
1940年後半アメリカ合衆国のカリフォルニア州で、一般社会に付いていけない若い元兵士が集まってバイクギャングを結成。映画や歌などで世界に広まると、ニュージーランドでもバイクギャングが発祥した。

1950年代後半 ポリネシア人
ポリネシア諸島出身の若者が King Cobrasを結成。2,000年に入るとアメリカ合衆国のギャングを真似るようになった。

1970年代 白人至上主義グループ
少数人であるが一部の白人が白人至上主義グループを結成。刈り上げ頭にブーツ姿が特徴で、他の人種や同性愛者などを攻撃した。

1970年代 マオリ人
若いマオリ人がMongrel Mob, Black Power や the Nomadsなどを結成。Mongrel MobはNZ最大のギャングに成長。ジャケットの記章や顔や体の入れ墨が大きな特徴である。

◎ ギャングの数について

2007年と古いですが、ニュージーランドは国民一人に対するギャングの割合が世界一高いと記録に残っています。ギャング数4,000人、人口は4百万人でした。
2019年には6,500人、2022年には8,400人近くとギャングの数は急増し、現在もその数は伸びていると言われています。

前に述べたように『ギャング規制法令2024』は、去年発足した連立内閣が制定したものです。
これに対し、労働、グリーン、マオリ党などの野党は、「個人の表現の自由に反する」、「警察の取り締まりが容易ではない」、「逆にギャングメンバーの居所を探すのが難しくなる」、「警察や司法省の時間が費やされる」と反対意見を述べています。

また、若者がギャングに加入するのを防ぐ手立てがないことにも不満を表しています。
調査によれば若者がギャングへ加入する要因は貧困と世の中からの孤立感であり、そうした若者がギャングとの関わりを持たないようにすることが最善策であると説明しています。

ウエリントンでは Mongrel Mobという団体のギャングがよく見かけられます。
背中にモチーフであるブルドッグの顔とMongrel Mobが大きく刷られた赤いジャケットを着た父親が、子供の学校の送り迎えをしている光景は珍しくはありません。
先月行われたマオリ族による『Hīkoi mō Te Tiriti /( ワイタンギ条約のためのデモ行進』の日も、込み合うウェリントン市内行きの電車の中で、Mongrel Mobの団体が一両を陣取っていました。

記章なしではギャングの見分けが付きにくくなるのは確かですが、彼らの高圧的な態度を抑えるには記章禁止は友好的な手段だと思います。

その一方で、野党が主張するように貧困と孤立感からギャングに加入する若者を阻止する策も必要です。

以前ニュージーランドの若者がギャングに加入する模様が描かれた映画を特集しています。興味のある人はこちらも是非ご覧ください。


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ABOUTこの記事をかいた人

1997年にNZに渡航。以来住み心地がよく現在に至る。旅行、ホテル業界を経て現在は教育業界に従事。 趣味は、ガーデニング、アートと映画鑑賞、夏のキャンプ旅行。 パートナーと中学生娘とウェリントン在住。